日本から遠く離れた地という印象を持つ方も多いヨーロッパですが、括りとしては実に微妙な問題を孕んでいます。
日本人的感覚では、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどを思い浮かべますがどこからどこまでをヨーロッパと定義するかについては政治的論争が今も続く深い問題になっています。
地理を学んだ際には、西は大西洋、南は地中海、東はウラル山脈、北は北極圏までの範囲と覚えた方も多いことでしょう。
ヨーロッパの堺
近年はEUに加盟したい国々が増加し、ヨーロッパの地理的定義すら疑問視される事態へとなりつつあります。
EUに加盟すれば、EUの共通通貨であるユーロを使用することが出来ます。
特に貨幣が弱い国にとっては経済的に大変魅力的な選択肢であり、EUに加入すれば国境もビザが不要で移動することが可能になります。
人の移動が容易になりますので、給与所得が低い地域からより高い給与を得ることが出来ると期待出来る地域へと当然のことながら人の移動が可能になります。
そのため、一度EUへ入れば、ドイツなどで就労出来る機会が広がります。
そのため、東はウラル山脈までという定義も、今ではトルコがヨーロッパであるという主張やロシアもヨーロッパであるという主張もありますので、主張する方の立場や社会的背景によって定義が異なっているのもまた事実です。
ヨーロッパとEU
また、EU内において人に移動が容易になるということは、ヨーロッパの中で深刻な難民問題を生んでいます。
難民の方は一度ヨーロッパに入国さえしてしまえばEU領内を自由に移動することが出来ることから、アフリカや中東の貧しい国から多くの移民や難民の方が流入するので大きな問題になっています。
特にヨーロッパにおいて就労を希望する人やよりよい社会福祉や生活を求めてGDPが高いドイツやイタリア、フランスなど限られた地域へと流入するのでヨーロッパ全体としてもその対処に苦慮している状況にあります。
また、ヨーロッパの歴史は近現代史では戦火の歴史でもあります。
ヨーロッパにおいて国が登場するのは紀元前ギリシャの時代にまで遡ります。
その頃から歴史のある地域になりますので、領地の奪い合いなどで多くの戦争を経験してきた地域になります。
特に第一次世界大戦や第二次世界大戦ではヨーロッパの多くの地域が戦火に見舞われ、多くの命が失われました。
また、戦火によりヨーロッパはその力を失ったことで、第二次世界大戦後はアメリカとソ連が中心となって世界経済を廻していく時代に入っていきます。
しかし、世界はその後冷戦時代へと突入し、アメリカとソ連が核開発競争などへ邁進していく時代へ向かいます。
結果としてソ連は解体し、ロシアへと姿を変え、アメリカと競争をするほどの力を失いますが、それでもまだ世界の大きな勢力の一つとして力を持っています。
ヨーロッパは政治的に大きく振り回されてきた過去の経験から、一つの共同体としてまとまることを選択しました。
その結果生まれたのがEUです。EUでは、領域内で人の移動は自由に行えますし、貿易での関税や会社の設立などでも領域内同士では行いやすい制度を導入しています。
また、何といっても特徴的なのが共通通貨ユーロの導入です。EU内であればどこに行っても同じ通貨を使用することが出来ますので、為替の変動を受けることがありません。
EU内は自由に移動出来ますので、週末にドイツから物価の安いイタリアへ食料品を買いに行くということも気軽に行うことが出来ます。
これも、共通通貨を導入していることで可能になる恩恵の一つです。
経済共同体として固まることで、アメリカやロシアなどの大きな勢力と並ぶことが出来ています。